【税理士コラム】予算管理はなぜ失敗するのか?
- sunenconsulting
- 5月19日
- 読了時間: 4分
中小企業の社長様から予算管理についてご質問をいただきました🙌
質問:
こんにちは。中小企業社長をやっています。おかげさまで従業員が30人を超え、売上も増えてきました。
全社一丸となって会社を成長させるために創業以来初めて、従業員も一緒に予算を作ったのですが、なかなかうまくいきません。
何か事業計画や予算作成のコツはありますか?
回答:
ご質問ありがとうございます。
僕も事業再生などの場面でクライアントの事業計画や予算作成支援を行うことがあります。
ただ、率直に言って、出来上がったものが計画通りに実行されるケースは多くないと感じています。
なぜ上手くいかないのか?
答えは一つではないと思いますが、僕なりに感じていることをお伝えします。
最初に逆質問です。
会社にいると予算という言葉が日常的に使われますが、質問者さんの中でこの言葉の定義は明確になっていますか?
僕の経験上、予算(あるいは事業計画)という言葉は人や立場、状況によって様々な意味で使われています。そして、当事者間で言葉の意味を擦り合わせることのないままスタートしてしまい、結果的にうまく機能しないというケースが多いように見えます。
いやいや、予算は予算でしょ?他に意味はないでしょ?とおっしゃる方もいるかもしれませんね。ただ、僕はそうは思いません。
僕には予算という言葉が、次の3つの意味で使われているように見えます。
① 見込としての予算
② 目標としての予算
③ 約束としての予算
それぞれどういう意味があるのか、詳しく見ていきましょう。
まず、①見込としての予算は「このままいけば今年はこうなりそう」という見込数値を意味します。予算策定時点で見込まれている受注や施策を反映させた数値であり、比較的実態に即した数値です。
次に②目標としての予算です。「ここまで達成できたらボーナスを出す」といった使い方です。多くの場合、社長は高めに、従業員は低めに設定しがちです。
最後に③約束としての予算です。たとえば銀行に対して「今年は必ず100万円の利益を出すからお金を貸してほしい」と約束するケースです。ここまでは絶対やります!もしできなかったら…という場面が多いです。
もちろん異論はあると思いますが、僕の考えでは、予算にはこの3つの意味が含まれています。
そして、問題は予算を立てる際に、3つのうちどれを重視するのか、当事者間で明確化していないことだと思います。
たとえば、社長は「高めの目標」として予算を位置付ける傾向が強いです。仮に達成できなくても、高い目標を置くことで会社が成長すればそれはそれでよいからです。しかし、同じ場面でも従業員は「約束」として考えがちです。
結果として、社長からすると何か物足りず、従業員は社長の圧を感じるような予算が出来上がります。そして、両者のギャップが埋まることのないまま1年間が終わってしまうのです。
したがって、予算のコツは何かと言えば、最初に予算の位置付けを明確にすることだと思います。
とにかく成長を!という場面であれば、目標としての予算、それもできるだけ高い予算を設定して、その趣旨を共有しましょう。
資金繰りが心配な場面や市場環境が悪化しそうな場面では、達成可能性の高い見込としての予算を作り、万が一の場合に備えましょう。
場合によっては目標・見込・約束の3つの予算を作ることがあってもよいと思います。
予算と言えば、昔、ある社長から次のような話を聞いたことがあります。
予算100万円で120万円売った場合と予算200万円で150万円売った場合を比べたら、どう考えても後者のほうがよい。それなのにほとんどの会社で前者は予算達成で褒められて後者は予算未達で叱られる。そんなバカな話があるか!?
僕もまったく同感です。こういうことが起こらないように、あなたの会社の予算の定義を、改めて明確にすることをおすすめします。

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