ここは、純喫茶『en 〜縁〜』。
税理士であり副業で喫茶店を運営するマスターのケイさんと将来税理士になりたい大学生のマユミさんが織りなす居心地のよい場所。やさしく、わかりやすく教えてくれるマスターのところには、相続で悩む常連さんからの相談が絶えません。
本日は、吉田さんがご来店。
先月、父を亡くしたとのこと。これから、相続人である弟と一緒に遺産分割をするそう。
財産を調べていくと、思った以上に財産が多くどのように相続税対策したら良いかマスターに相談することにしてみました。
それでは吉田さんとマスターの会話をみていきましょう!
○本日のポイント
相続税対策は生前中に行うこと
生前中に財産を把握しておくことが望ましい

マスター、父の葬儀に来ていただきありがとうございました。父がここに通っていたことは知っていましたが、まさかマスターが税理士だったとは知りませんでした。

吉田さん、この度はご愁傷様でした。お父様にはよくお店に来ていただいていました。ありがとうございました。

父も、母を亡くした後は一人でそれなりに元気で暮らしていたようで、よくマスターの話をしていましたよ。それで今回は父の相続税に関する相談をしたいんです…

どのような件でしょうか?

父の財産は、自宅の土地(200㎡・2000万円)、建物(120㎡・500万円)、金融資産(2000万円)がありました。調べたところ相続税がかかりそうなのですが、なんとかして払わずにすむような対策をすることは出来ませんか?

吉田さん、それは無理です。相続税対策は無くなった後にすることができないんです。こればっかりはしょうがないです…

そうなんですね。父から、相続について話を聞かされたこともあったのですが、そんなに財産があるようにも見えなかったし、考える必要もないと思っていました。その結果が相続税というところに跳ね返ってきてしまうのですね。

みなさん、同じことを言われます。『親にそんなに財産があると思わなかった』とか、『相続が発生した後、相続税を納めるまでの10ヶ月間に対策をするものだと思ってた』とか。実際にはこれでは遅く、できる対策が限られてしまうんです。

まだできる対策はあるんでしょうか?

状況によっては、相続税の評価減を適用できる可能性があります。例えば、お父様が住んでいた自宅について要件を満たした人が相続した場合には評価を減少するというものです。

今回、自宅を相続するのは長男である私です。弟も近くにいるのですが、すでに家を建てていまして私が相続することになりそうです。こんな私が自宅を相続した場合にはその特例は使えるのでしょうか?

吉田さんは持ち家ではないのですか?

私は、ずっと転勤族だったので家を持っていないのです。

それであれば、評価減が適用できる可能性があります。ただし、相続発生後から10ヶ月以内にその自宅に住んでいる必要があります。この点は大丈夫でしょうか?

大丈夫です。昨年度末に定年退職をして、継続雇用で本社勤務になったのでこれから家でも買おうかと思っていたところなので。ちょうど、父とも同居しようかと考えていたところでした。

それならちょうど良かったですね。お父様も愛着のある土地に吉田さんが住んでくれることは嬉しいと思いますよ。

ありがとうございます。そうなると、どのくらい相続税を支払えば良いのでしょうか?

正確には調べてからの回答になりますが、ざっとみたところ相続税申告書を提出したら相続税はゼロになりそうですね。

えっ、ゼロですか?

えっ、ゼロ?あっそうか!マスターが話していた評価減を使うと、土地の評価が8割引になるから、結果として基礎控除額以下になるということですよね?

その通りです。申告書を提出したら相続税はゼロということになりそうです。

ありがとうございます。それなら結果的に相続税対策なんてする必要なかったですね。

それはそうですね、とは言えません。

マスター、どういうこと?吉田さん、相続税申告をして相続税がゼロなら対策なんてする必要なかったと思うけど。

相続税申告は基本的に税理士に頼む業務です。これを払うことは、私にとっては嬉しいことですが払う側からしたらこれも払わずに済む方法を考えるのが相続税対策なのではないでしょうか?

なるほど。税金という観点しか見てなかったので、マスターに払う報酬なんかも減らすことができるならそれは対策になったかもしれないです。でもそんな対策ってあるんですか?

生前贈与や生命保険の活用など、対策方法はありますよ。その辺りをお父様がお話ししたかったのかもしれませんね…

本当ですね。しっかり聞いておけば良かったです…

吉田さんもご自身の相続の時は、事前に対策ができるといいですね。

また相談させていただきます!
○ おさらい
相続税対策は生前中に行うこと
生前中に財産を把握しておくことが望ましい
本日のコラムは、いかがでしたか?皆様もハッとする部分があったかと思います。
中園一樹会計事務所では、相続に関する相談を受けております。お客さまごとに相続対策は異なりますので、まずは専門家である私たちに相談してみませんか?