ここは、純喫茶『en 〜縁〜』。
税理士であり副業で喫茶店を運営するマスターのケイさんと将来税理士になりたい大学生のマユミさんが織りなす居心地のよい場所。やさしく、わかりやすく教えてくれるマスターのところには、相続で悩む常連さんからの相談が絶えません。
今日は安田さんが来店。
最近、主婦仲間との会話は親の介護と相続の話ばっかり。その中でも相続税について興味津々の安田さん。これまで節約、節約で慎ましく生活してきた安田さん。そんな安田さんにとって親から財産をもらうだけで相続税がかかることは信じられないという考えで何とか対策がないかと日々考えている様子。今回は自分が勉強してきたことが正しいかをマスターに確認しに来ました。果たして安田さんは正しく理解できているでしょうか?
それでは、そっと覗いてみましょう。
○本日のポイント
生前贈与は有効な相続対策になり得る
名義預金と見なされないように注意が必要

マスター、相続税って本当にもったいない税金ですよね?

確かに事前に対策が出来たりする点では何もしないともったいないですかね…

そうじゃなくて、なんで日本だけこんなに高い相続税を支払わなければいけないのってことです。アメリカなんかはほとんどの人に相続税がかからないと聞きましたし、中には相続税がかからない国もあるとか?

その通りですが、こればっかりはどうしようもないです…

何で相続税なんてものがあるのかしら?

財産を持っている家系に延々と財産が集中しないように作られた税法だと言われています。過去には税率90%という時代もあったようで、よく聞かれる『3代で財産がゼロになる』というのはこの税率の高さから言われた言葉のようです。

そう考えたら、今の税率は安いってこと?

税率だけで考えたら安いですが、納める税金のことを考えたら安いとは言えないかもしれません。

そう、その通りよね!それでねマスター、今日は私の両親の相続対策を考えてきたんだけど聞いてもらっていい?

もちろんです。

まずは両親の預金は毎年少しずつ、私と弟に移動しようと考えているの。

生前贈与、ですね?

そうなの!毎年110万円まではもらっても相続税がかからないっていうじゃない?だからそれをやろうと思ってるの。

それは相続税対策になると思います。ご両親も納得しているんですね。

実はね、両親は反対なの。私たちにお金をあげたらパーっと使われちゃうんじゃないかって心配らしくて…そんなに信用ないかな?

安田さんの信用の有無はわかりませんが、両親が反対だったら生前贈与は出来ませんね…

でね、両親から言われたのが私と弟の名義の預金通帳を作ってくれば、そこに毎年110万円を入金してくれるんだって。ただし、それを渡すのは両親が共に亡くなった後だってさ。この信用の無さについてどう思う、マスター?

改めて安田さんの信用の有無はわかりませんが、それは生前贈与にならず、すなわち相続税対策にもなりません。

えっ、どういうこと?だって両親から私と弟にお金をくれるって言ってるんだよ?贈与じゃないの??

それは名義預金と呼ばれてます。

名義預金?

そうです。実際の預金者はご両親なのに名義だけ安田さんや弟さんが使われている預金のことです。このケースでご両親に相続が発生したら、ご両親の財産として相続税を支払う必要があるということです。

えっ、でもマスター、名義預金って誰がどうやって判断するの?

最終判断は税務署になりますが、確認方法としては以下の2点です。一つ目が、誰がその預金口座を管理していたかです。これは預金口座の印鑑や誰が保管していたかなどを勘案して判断します。二つ目はその預金口座が実際に使える状態にあったかどうかを確認します。贈与なのでもらった側が自由に使えることが前提ですが、贈与する側の気持ちとしては贈与した直後に散財されるのは気持ちが良くないということで贈与する側が使えないようにするケースがあります。

まさにウチは名義預金かもしれない…

こういう話を聞くと、誰もがそう思うかもしれませんね。でも大丈夫です、ちゃんと贈与すれば良いのです。

ちゃんと贈与する、とは?

先ほど話した通り、あげる側はあげたらそのお金の使途について何も言わないことやもらった側がもらった財産をしっかりと管理することです。

ウチの両親、納得してくれるかな?

これにはちゃんと話し合いをする必要があります。まずはご両親に今日の話をしてみてください。ご両親の相続でいくら相続税がかかりそうかを判断して、その上で生前贈与の対策を検討します。それに加えて、生前贈与するお金の使い道などについて双方が納得するような対策ができれば対策がうまくいくと思いますよ。

わかりました、両親に話をしてみます。困ったらまた相談にのってくださいね。

浜松市にある中園会計事務所では、『相続税プレ申告』というサービスがあるそうです。ご両親が健在の間にどんな財産があるかを調べて、相続税の申告書を作成するというものです。これによってどんな対策が必要かわかると言われています。詳しくはこちらをご覧ください。

こんなサービスがあるんだ、両親にやっておいて欲しいな。マスター、今日はありがとうございました。
○ おさらい
生前贈与は有効な相続対策になり得る
名義預金と見なされないように注意が必要
本日のコラムは、いかがでしたか?皆様もハッとする部分があったかと思います。
中園一樹会計事務所では、相続に関する相談を受けております。お客さまごとに相続対策は異なりますので、まずは専門家である私たちに相談してみませんか?