ここは、純喫茶『en 〜縁〜』。
税理士であり副業で喫茶店を運営するマスターのケイさんと将来税理士になりたい大学生のマユミさんが織りなす居心地のよい場所。やさしく、わかりやすく教えてくれるマスターのところには、相続で悩む常連さんからの相談が絶えません。
今日は相続セミナーを受けてきた佐藤さんがご来店。
なんでも遺言作成を勧められたようで、揉めたら相続税が高くなると言う理由からだそう。それが本当なら、親の相続で負担を減らすために遺言を作成しておいて欲しいと考えているようだが、それが本当か確認するためにマスターのもとへ駆け込んだ結果はいかに…
それでは、そっと覗いてみましょう。
○本日のポイント
揉めたら支払う相続税が増える可能性はある
期限内に相続税申告を終えることで、評価減少などにつながる可能性がある

マスター、揉めたら相続税が増えるって聞いたんだけど本当なの?

佐藤さん、それは事実だと思いますね。

いまいち理解できないんだけど、揉めようが揉めまいが財産の額は変わらないのになんで相続税が増えるの?

これは相続税申告という手続きを詳しく説明する必要がありますね。少し長くなりますが聞いてください。まず、相続税申告はある人が亡くなってから10ヶ月以内に申告書を作成し、相続税を納付する手続きが必要です。どんな人が相続税申告をする必要があるか分かりますか?

確か、基礎控除額を超過した財産を持っている人、でしたよね?

その通りです。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で求められるのもご存じですか?

セミナーで聞いたから分かります。

よくセミナー聞いていますね!この相続税申告を10ヶ月以内に行えない場合には相続税が増える可能性があります。

なんで?

しっかり期限内に申告している人を守るため、ですかね?

確かに、期限を守っている人からすれば期限守らなくても大丈夫ならゆっくり手続きしたいと思うよね。特に人が亡くなった後の手続きって大変なことが多いし…

期限内に申告しないと無申告加算税などが課せられる可能性があり、実質的な相続税負担の増加となります。ちなみに、円滑に財産を引き継ぐ話し合いが終わり、期限内に申告手続きをした場合には相続税の割引のようなものがあります。

えっ、税金の割引があるの?

実際には割引ではないのですが、相続税負担が減る可能性があります。何があるか分かりますか?

うーん、セミナーで聞いたような聞いてないような…

マスター、配偶者間での相続は税金が掛からないような気がしたけど、それのこと?

その通り、と言いたいところだけど、佐藤さん向けに少し解説しますね。まずはマユミさんが言った通り、配偶者が相続することが確定している財産については、その配偶者の法定相続分または1億6,000万円のどちらか大きい方まで相続税を払わなくてイイですよというものです。

あっ、セミナーで聞いた!確か、配偶者の税額軽減って言葉だったような…

その通りです。よく聞いていましたね。

それなら大半の人が配偶者に相続させることを考えるよね。国としては税金が払われなくてもイイの?

佐藤さん、配偶者から財産を相続した人が亡くなったら、一般的にはその人には配偶者がいませんよね。次の相続で相続税負担が大きくなる可能性があるんです。

あー、二次相続ってやつ?

そうです。次の相続では配偶者もいない、相続人も一人少ないとなると次の相続で税金を多く支払わなければならない可能性があるということです。

一旦配偶者に渡せば良いっていう問題でもないんだ。

これについてはまた細かく話をするとして…相続税負担が減る方法として、財産の評価減などもあります。マユミさん、分かりますか?

確か、土地を相続した場合に評価が減るとか…?

そうです、亡くなった人が住んでいた土地を一定の要件を満たす人が相続した場合には、その土地について100坪まで評価額を8割引してくれるものがあります。

8割引!?スーパーでは見ない割引率だなぁ…

これは、住んでいる土地に対しての相続税が大きすぎると住んでいる土地を売って相続税を支払わなければいけなくなることを防ぐための措置です。なので、細かい要件などがあります。ちなみに事業用の土地などもこの評価減の対象となる可能性があります。

うーん、これらを使えば相続税負担が減るかもしれないね。

その通りです。ただし、配偶者の税額軽減や土地などの評価減を適用するためには、①期限内に相続税申告を行うこと、②誰が何を相続するか決まっていることが必要です。

だから、揉めると相続税が増えるって言われているんだ。

そうです。揉めたら相続税が増えると言うより、円滑に行ったら割引がある可能性がありますよという話ですね。

ちなみに相続税の申告期限内に話し合いがまとまらなかったらどうするの?

一般的には、期限内に法定相続分で相続したと仮定して申告書を作成します。ひとまず期限内に申告しないと、先ほど話したような無申告に対する加算がある可能性がありますからね。それで後日、誰が何を相続したかが決まってから修正した申告書を再度提出する流れです。この場合には申告期限である10ヶ月を超過しているので、評価減などが使えません。

それは大変だ。親の相続で揉めることはないと思うけど、何かあったら10ヶ月超えちゃうもんね。この場合にはどういう対策をしておけばイイかな?」

親に遺言を書いておいてもらうとイイですよ。遺言があると、財産分けの話し合いをする必要がないので相続税申告手続きもスムーズに行くと思います。

ありがとう、マスター。早速、親に遺言を提案してみるよ!
○ おさらい
揉めたら支払う相続税が増える可能性はある
期限内に相続税申告を終えることで、評価減少などにつながる可能性がある
本日のコラムは、いかがでしたか?皆様もハッとする部分があったかと思います。
中園一樹会計事務所では、相続に関する相談を受けております。お客さまごとに相続対策は異なりますので、まずは専門家である私たちに相談してみませんか?